在宅で受けられるレントゲン検査の利点と注意点
- コバヤシ
- 2024年2月24日
- 読了時間: 5分

現在、在宅医療の現場で行える医療行為は増えてきています。在宅で実施されているのもとして血液検査や検尿、心電図、超音波検査、呼吸器機能検査など多岐に渡ります。
最近では、ポータブルX線撮影装置の小型化が進み、在宅でのレントゲン撮影も普及していますが在宅医師が撮影することが多く、放射線技師が実際にご自宅に伺って撮影するのはまだ少ないケースだと思われます。
自宅でレントゲン撮影ができるメリットとは?
在宅療養の方がこんな時、ご自宅でレントゲン撮影できたらいいなという場面をあげてみました。ちなみにこれはいつもお世話になっている在宅医の先生の資料を基にしています。
・呼吸器疾患・心疾患の方の定期フォロー及び急性増悪時の判断
・胃瘻チューブなどを自宅で交換する際の確認
・コロナ肺炎や結核を疑う際に通院困難な方への対応(感染症予防)
・寝たきり状態の方に多い便秘患者への重症疾患(イレウス等)との鑑別
・転倒時の際の緊急性が少ない場合の骨折評価
・在宅医療導入時の状態チェック
・施設入所時等での通院困難患者の健康診断撮影
病院を受診すれば、レントゲン撮影だけでなくCT検査なども可能です。必要な検査としてCT撮影ならいいですが、せっかく受診したからと全身CT撮影を実施する医師も少なくありません。医療費の圧迫や不必要な検査被ばくに繋がります。
在宅医療の利用者が病院を受診する場合
在宅医療を導入されている方々(患者様、そのご家族など)はどんな意思で在宅医療を希望されているでしょうか?
ご病気で通院が難しい、過疎地で通院が困難、これ以上の治療を望まずに住み慣れた家で過ごしたい、または家族との時間を過ぎしたい。本人が病院受診を拒否されている、独居の方で社会との関わりが薄く、民生委員さんからのご依頼で在宅介入があった。
色々なケースがあると思いますが、ほとんどが病院を受診したくてもできない問題や思いがあると思います。
そのような方々が例えば、在宅療養の中で手が腫れてきた。もしかしたらベッドサイドで挟んだかもしれない、本人様が意思疎通できてお話できたらいいですが、できない方もいらっしゃいます。ご家族が心配して、訪問診療の際に医師に相談すると「触診ではわからないので整形などの病院を受診してください」と言われる。ご家族は心配なので病院受診の段取りをします。
・ご家族が働いていたら仕事の休みを確認する、受診日の介護タクシーの予約を入れる。
・外出する為の準備、介護タクシーで病院を朝から受診する。
・病院で手のレントゲン撮影。
・待ち時間を経て医師の診察。はっきりとした骨折は無いが念のためモーラステープを出される。
・介護タクシーで帰宅する。(介護タクシーが往復で1万円程度)
・後日、主治医の在宅医に報告
こんな流れではないかと思います。私も家族が在宅療養していたので同じような経験があります。コロナ期間は病院受診も非常に気をつかい、本人も付き添いの家族もかなり疲れました。自宅ですぐにレントゲン撮影して骨折の判断できたら、本人もご家族も安心して在宅療養できるのではないでしょうか。
在宅への訪問時の注意点とは?
在宅という特殊な環境下での検査は注意点も多々あります。
まずはご自宅に行くまでに無事に家にたどり着くことです。Googleマップに住所入れて検索出来ればいいですが、僻地の在宅医療の厳しさという点ではご自宅が山の中にあり、ポツンと一軒家のような山道を登って地図に出ない場所に行くこともあります。
逆に都会では駐車場がなく、離れたところに車を停めて歩いてご自宅に行くこともあります。機材が小型化しても台車1台分の荷物はあります。
撮影するお部屋は訪問してからでないと室内の状況が把握できません。また患者様の状況も初見では把握できていませんので、同行の先生や看護師さんに事前に情報をもらってから撮影に入ります。
撮影するポジショニングは基本的に患者様の楽な状態を考慮して実施するように心がけています。
ご自宅でレントゲン撮影が出来ることに喜んでいただける場合もありますが、中には患者様の状態が不安定で、自宅でのレントゲン撮影が初めての状況にご家族が心配されてることもありました。まだ一般的でない状況に被ばくなど不安に思われる方もいらっしゃいます。
これまでできなかったことが出来るようになることでいい面もありますが、技師として患者様やそのご家族との距離が近くなり、病院時代より接遇対応が難しい場面も出てくると思います。
最後に・・・
在宅医療が進んでいく中、在宅でのレントゲン撮影の必要性は高まっていくと思っています。実際に訪問でのレントゲン撮影やエコー検査をやっていますが、大変有意義な検査だと思います。具合が悪くなってから検査するのではなく、受診が必要かを判断する材料として訪問検査を実施することで、患者様に不安なく療養に専念できる環境を整える役割を果たせると考えています。
実際に在宅医療の分野で活躍されている放射線技師さんや在宅医でレントゲン撮影をされている先生方もいらっしゃると思いますが、その方々も工夫して検査を実施されていると思います。ご興味がある方は情報共有させていただきたいのでご連絡ください。また訪問検査の導入をお考えのご施設もご相談ください。